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節約と健康を目指したメモ

ステロイドよりも有効!感音性難聴に対する新しい治療法の可能性

京大サイトにupされた「突発性難聴に対する新規治療法の有効性を報告」って記事。タイトルを見たときには、また微妙な情報で肩すかしを食らうんだろうな~と斜に構えながら読んだら、、、凄かった!タイトルは「突発性難聴に対する」となってるけど、論文では「突発性難聴を含めた感音性難聴」とのこと。感音性難聴で最もポピュラーで効果があるのはステロイドかと思ってたけど、それを超える効果みたい。読んでて、すごく気持ちが明るくなった。
ちょっと難しかったけど、分かる範囲でまとめてみました。

◆概要

インスリン様細胞増殖因子1(IGF1)を内耳に直接徐放(※)する治療を行い、効果と安全性を検証
ステロイドの中耳注入療法と比較して、安全性・効果ともに高いという結果が得られた

※徐放(じょほう):成分や内容物など,中に含まれているものを徐々に放出すること(「大辞林 第三版」より)

◆研究のポイント

・標準的な治療法であるステロイド全身投与を行っても約半数の症例で十分な聴力改善は認められない
ステロイド全身投与では改善できなかった難治性突発性難聴には、ステロイドを鼓膜内に注入する治療法が一般的
・(今回の研究対象である)ゼラチンハイドロゲルを用いて内耳にIGF1を徐放する治療では、ステロイドの鼓膜内注入よりも優れた安全性と有効性が期待できるという結果が得られた

◆詳細

1)突発性難聴について
突発性難聴は突然に片側の聴力が失われる疾患で年間35000人が国内の医療機関を受診
・標準的な治療法は、ステロイドの全身投与
  -2 割の症例では全く改善が認めらない
  -3 割では不十分な聴力回復にとどまる
・標準的な治療法では有効性が認められない場合の治療オプションはあるが、明確な有効性は明らかになっていない
 →その中でも最も広く用いられているのが、ステロイドを鼓膜内に注入する治療法
  有効性には幅があり、2~5割程度の症例で聴力改善があるとされている

2)新しい治療法の研究
突発性難聴を含めた感音難聴に対する新しい治療法として、ゼラチンハイドロゲル(※)を用いた IGF1 内耳局所投与を研究開発してきた
・IGF1 は内耳の聴覚に関係する細胞を保護する作用がある
・ゼラチンハイドロゲルを用いて内耳に徐放することにより、聴力を回復させる効果があることを動物実験で確認
・2010 年にステロイド全身投与に対して効果を認めない突発性難聴症例を対象とした臨床試験を実施
 →安全性が確認され、25例中14例で聴力改善が認められた
・今回の研究では、有効性検証を目的として、無作為化対照試験を(※)行った

※ゼラチンハイドロゲル:ドラッグデリバリーシステム(※)として使用
ドラッグデリバリーシステム:体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御し、コントロールする薬物伝達システムのこと(Wikipediaより)

※無作為化対照試験:データのバイアス(偏り)を減らすため、被験者をランダムに「新しい治療を行う集団」と「従来の治療を行う集団」に分けて、治療結果を比較すること(だと思われます。色々調べたけど、RCTという研究方法のことだと理解しました)

3)今回の研究内容、結果
ステロイド全身投与に対して効果を認めない突発性難聴症例120例を無作為に2群に分けて経過を観察
 -治療方法:IGF1治療【研究対象】、ステロイド(デキサメタゾン)中耳注入治療【従来の治療法】
 -観察期間:投与から8,12,16週目
・純音聴力検査で10dB以上の聴力改善を認める症例の割合:
 IGF1治療の方が有効割合が高い傾向であるが、統計的な有意差なし
 -投与8週目:IGF1治療では66.7%、ステロイド中耳注入では53.6%が改善
 -投与12週目:IGF1では70.7%、ステロイド中耳注入では55.4%
 -投与16週目:IGF1では67.9%、ステロイド中耳注入では54.7%
・純音聴力検査閾値の改善量は、統計的な有意差があり聴力改善が認められた。
・有害事象(副作用のことかな?)
 -問題となる重篤な有害事象は観察されなかった
 -鼓膜穿孔(※)は、ステロイド中耳注入では15.5%に生じたが、IGF1治療では1例も認められなかった

※鼓膜穿孔(こまくせんこう):鼓膜に穴が開いた状態(メルクマニュアル医学百科より)

結論

IGF1治療は、テロイド中耳注入よりも安全で有効な可能性が高い!!!

雑感

論文に掲載されているグラフを見ると、約12週までは、(素人目には)聴力が改善しているように見えます。
聴力は、発症から1~2ヶ月で固定するといわれているけど、3ヶ月以上は改善の可能性があるということだよね?ステロイドの全身投与の有効性が認められなかった症例で臨床試験をしているということは、発症から一定期間経過後に新治療法を試している、、、ということを考えれば、発症からどのくらいの時間が経っているのだろう?時間が経っても症状が改善することがあるっていうのは、すごい希望だと思う。
突発性難聴を含めた感音性難聴」って、具体的には何の病気を対象にしているのだろう?発症からどれくらい経過した症例なのだろう?と色々気になるけど・・・と英語の論文を覗いてみたら、日本語よりも詳しいっぽい?気にはなるけど、今は読む気力が(^^;;;

論文によると、ステロイドの鼓膜内注入は難治性の突発性難聴には、ステロイドの鼓膜内注入が世界的に最も広く用いられている治療法らしいです。それよりも効果も安全性も高い治療法って・・・!
これから地検段階のようですが、早く一般的な保険診療として広まってほしい。
感音性難聴になって大きな不安の1つは、有効な治療法が確立されていないこと。臨床試験だけでなく、治験でもよい結果が出ることを祈っています。

・京大サイト:http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/141209_2.html
・論文(日本語):http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2014/documents/141209_2/01.pdf
・論文(英語):http://www.biomedcentral.com/1741-7015/12/219